フィリピン看護師が受け入れ要件付きで日本で看護師として就労できることが決まりました。外国人看護師の受け入れの問題からそれを取り巻く労働環境など様々な問題について述べてみます。

外国人看護師の受け入れ

1.外国人看護師受け入れの流れ
1999年 専門・技術的分野の外国人労働者を積極的に受け入れる基本方針を閣議決定。
2004年 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」の原案に、フィリピンなど東南アジア諸国との自由貿易協定(FTA)交渉で最大の焦点となっている看護・介護分野などでの外国人労働者受け入れ検討が明記。
2004年07月29日 日本看護協会が条件付きで容認する意向「看護師不足の解消は他国に頼るべきでなく、養成、有資格者の職場復帰、離職者減らしへの取り組みをしてなお不足の時、受け入れを考えるべきだ」と指摘したうえ、
1.日本の国家試験に合格
2.安全に看護できる日本語能力の習得
3.日本人と同じ待遇−を前提に受け入れを容認する考え
(当時)、外国人が看護師資格を取得するためには、日本の看護学校を卒業して国家試験に合格する必要がある。就労については研修目的で可能だが、4年以内に制限されている。
2006年9月9日 日本とフィリピンのEPAは正式に締結され、外国人看護師の日本での就労が可能となった。日本が締結したEPAのなかで、初めて労働市場の開放が盛り込まれた。
2006年12月6日 参議院本会議で締結を承認。2007年に発効予定。

締結前の資料としては、
「日比EPA(看護・介護分野での比人受け入れ)に係わる基本的枠組み」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/philippines/pdfs/hapyou_0411.pdf
2.受け入れ要件(締結されたもの)
1.日本の国家資格取得
 フィリピンの看護師資格保有者で、3年間の実務経験が必要で、国家資格取得前は国内の病院での就労・研修
2.日本語研修実施
 入国後6ヶ月の日本語研修
3.日本人と同等以上の報酬
4.看護師の受け入れ枠は当初2年間で400人を上限とする
資格取得後の在留期間の上限は3年だが、更新回数の制限無し

 FTAとは
FTA(自由貿易協定)は、2国間、国と地域、地域間同士で締結され、輸入される物やサービスにかかる関税や数量制限などの貿易障害となる壁を撤廃し、自由な貿易にすることを目的している。

 EPAとは
EPA(経済連携協定)は、FTA(自由貿易協定)を中心に、人の移動やサービス、投資ルールの整備など幅広い分野で相手国や地域と通商ルールを定める協定。市場の共通化によって規制の撤廃や各種経済制度の調和などを行うもの。
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日本看護協会の見解ポイント

日本看護協会の見解ポイント
1.医療・看護の質を確保するためのフィリピン人看護師受け入れ4条件(参照 日本看護協会が主張している4条件)
2.フィリピン人看護師の受け入れは、日本の看護師不足を解消するためではなくあくまでも2国間の貿易交渉の問題である
3.フィリピン人看護師に対する職場環境の整備・支援が重要である

日本看護協会が主張している4条件
1.日本の看護師国家試験を受験して看護師免許を取得
2.安全な看護ケアが実施できるだけの日本語の能力を有する
3.日本で就業する場合には日本人看護師と同等以上の条件で雇用
4.看護師免許の相互承認は認めない

日本看護協会 ニュースリリース 2006年9月12日 より引用
http://www.nurse.or.jp/
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問題となるところ

1.日本での看護という職業が魅力の乏しいものに
 すでに外国人看護師を導入しているカナダでは、看護は魅力のない仕事として見られていると聞いています。
賃金格差があると言われているカナダと日本の受け入れ要件は同じではありませんが、
仮に、看護師のなり手がいない、人手不足だから外国人看護師を導入する…現状では要件にはないが、低賃金の外国人労働者が可能になったりすると、
カナダと同様に看護というものに魅力を感じなくなるのではないか? という恐れがあります。
後に述べる技能労働以外の3Kとも5Kとも言われる労働を外国人に肩代わりしてもらっている。
看護も一時期3Kとか5Kとも言われていたが、そのような自虐的なことを言っていても職業にはなんのプライドも示せないことに気づいたのでしょう。
日本における看護が、単なる労働に終わらぬ魅力的な職業としてあるためには、過剰もしくは制限なく外国人看護師を入れるべきではないと考えます。
また、日本の介護において、すでに介護の学校に行く人などが減少しているそうです。
低賃金、過酷な労働などの影響があるようです。私たちが働くのは賃金と看護への情熱だと思います。条件が変わればこの二つを取られかねない…そんな気もします。
町工場のようなところには日本人が就職を希望したがらないため、外国人労働者を雇っているところが多いようです。看護が魅力がない職業になり、外国人に依存するのではダメなのです。

第一生命のアンケ-トによると、女の子なりたい職業で2004年は看護師が3位で、過去ずっと上位に選ばれています。
http://www.dai-ichi-life.co.jp/company/newsrelease/nr0506_f.html
医療事故の報道がたくさんあっても、看護師の順位は変わっていないのです。
ちなみに医師の方は、2001年は3位ですが2004年は6位に落ちています。
看護がいつまでも魅力あるなりたい職業であり続けて欲しいと願います。
2.言語の問題
 アメリカで働く場合CGFNSという試験があるそうで、英語の能力がある水準を満たしていることが条件のようです。
日本においては日本語研修となっているが、アメリカと同様の試験は無いようです。(日本語検定2級を取得したものを対象と合意前の看護協会の意見にはありました)
フィリピンの大学によっては、日本への就労を目指して日本語教育をしているところもみられるようです。
日本語能力の重要性については、看護協会 ニュースリリース 2006年9月12日  が詳しく、
要約すると
1.日本人の生活や文化を理解することが必要
2.他職種間のコミュニケーションも不可欠で、患者が高齢・重症化していることからケアには高いコミュニケーション能力が必要
3.看護記録の問題およびケアには読み・書き・話す能力が欠かせない

上記のような問題は確かにあるでしょう。言語コミュニケーションは大切です。
友人によるとワビ、サビもわからない外国人看護師なんて…と言っていましたが、今の若い人自体がそんな言葉さえも知らないでしょうし、微妙なニュアンスとか地方のしきたりなどは日本人もわからないところが多いでしょう。
すでに働いているフィリピンの介護士の報道などを見ると、あまり不自由という感じは受けませんでした。もちろん介護と看護では異なるでしょうが。
コンピューターのサポートは、日本人を雇うより外国人に日本語のサポートをしてもらった方が安上がりなようで、実際に外国人に電話でのサポートをしてもらったところ、流暢とまではいかなかったけれど、電話での意思疎通は十分可能でした。

フィリピンの母国語が英語なのでわざわざ難しい日本語を勉強する人などあまりいなく、アメリカとかイギリスに行く人が多て日本には来ないんじゃないの? と思われるかも知れませんが、
欧米各国ではフィリピン看護師の受け入れを減らしている、もしくはその国の政策によってフィリピン看護師を安定して受け入れているものではないようです。また、地理的にも近いこともあり、日本で就労を希望する流れがあるようです。
訂正:国語はフィリピン語(タガログ語)で、英語は外国語のようです。また、そのときの政権により英語教育の在り方がかわっているようです。
3.労働関係
 "2007年ショック"という言葉があるように、いわゆる団塊の世代の人が退職を迎える時期になっています。
多数である団塊の世代の人達が看護を必要としてくる年代になっています。
そして人口は減少に向かっています。
少子化ということもあり、看護師になろうとする人も減少する可能性が考えられます。
つまり、これから高齢者の看護・介護で人員が必要なことは必至である、今後の看護師の需給見通しも変化するのではないかと考えられます。
厚生労働省によれば、現在約4万2000人の看護職(看護師、保健師、助産師)が不足しており、
2010年では約1万6000人が不足する見通しだそうです。そのデータからすると、看護師は充足方向に向かっているように見えます。
更にその後の充足もしくは不足がどうなのか? 現在言われている(入院基本料)7対1看護などが考慮されての人数なのかは不明で、もし7対1看護が考慮されていない見直しであると、不足は更に多くなるのではないかと思われます。
また、7対1看護における看護師の確保について、都市部の大病院に比べ地方の病院では、看護師を確保することが難しくなっており、それが外国人看護師の雇用に関連することも考えられます。
 3.1 雇用
 第94回看護師国家試験に4.4万人合格。
つまり年間新たな看護師が4.4万人増えるということです。
また、看護協会の方向性として、人材不足に関しては潜在看護職員数55万人を再教育などをして職場に復帰させようという考えのようです。
一度辞めた人が再就職するのには、医療技術の進歩などで二の足を踏むかも知れませんし、後のサポートなどの体制も必要です。
保育所などのインフラが整わないと潜在看護師の再雇用は難しいかも知れません。
 3.2 離職
 もう一方で現職が辞めないということも大切だと考えます。
待遇・やりがい・スキルアップなどによりやりがいのある辞めない職業、つまり定着率のよい職業にしていくべきだと思います。
職業としての魅力に高収入というのがありますが、やはりそれだけではないのです。
やりがいのある仕事、そして勉強できる、またそれらをすることにサポートがあるような職場でないといけないでしょう。
辞めたくない。魅力のある職業であるということに意味があり、これも数のみの充足で満足できるものではありません。

離職率に関しては、「看護協会ニユ-ス Vol.455 5月15日」
2004年(平成16年)病院における看護職員需給状況調査によると、
離職率は11.6%となっている。
都市別で高いのは東京都16.3%であり、秋田県が4.4%と一番低い。

雇用動向調査(厚生労働省大臣官房統計情報部)によると、
看護師の離職率は低いというデータもある。
看護職員離職率 平成11年 平均離職率10.9%
全産業の離職率は 同じ平成11年では15.0%。14年は16.6%
また年代不明であるが、介護の離職率は20%を越えているとのこと。

離職理由では、
平成14年 前回職場の主な退職理由
1位 出産・育児・子どものため 
2位 結婚 
3位 他分野への興味
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/06/s0617-6c1.html
第六次看護職員需給見直しに関する検討会

本当に出産・育児・子どものためなどというこのデータ通りの理由なのか? 
たしかに女性が多い職場なので結婚、出産、育児で辞める人が多いでしょうが、
退職理由の裏には例えば患者の死、夜間の勤務、多忙、患者からの暴力などストレスの大きい看護という仕事ーそれらのため燃え尽きてしまったり、疲弊した姿があり、それを結婚などの理由にすり替えているのではないかと思えます。
疲弊した姿には看護師不足があります。

現在(入院基本料)7対1看護が制度化され、それをクリアするために中央の大病院にはたくさんの新卒及び既卒の看護師を集めています。
7対1がゴールなのか? 7対1など経験したことがないのでわかりませんが、それでも少ないような気がします。
いったい何人いればいいのでしょうか?
 3.3 賃金について
 フィリピンでは医師の月給が300ドル(約3万5000円)前後、看護師は約120ドルなのに対し、日本の看護師は約25万円、アメリカの看護師は3000ドル(約35万円)以上の月給だそうです。
その賃金格差から、2000年以降で3500人以上のフィリピン医師が看護師となって外国で働くという状態になっています。
高収入を得るため海外に行くということは、同時にフィリピン国内が低賃金で労働条件がよくないということが言えます。

ところで合意内容として、 3.日本人と同等以上の報酬とあり、
他の外国では当事国の看護師と外国人看護師の賃金差があり、低賃金労働者として働いているようですが、日本人と同等以上の報酬という合意内容があることからも、フィリピン人の日本での労働は収入が安定し高収入と考えられているようです。
日本人と同等以上の報酬ということは、看護師になってからの収入を保証するだけでなく、看護協会の当初の要求は「日本人看護師と同等以上の条件で雇用されること」とあるので、研修期間中の賃金の安定も意味しているのではないか考えます。
しかし、最低賃金を保証する一方で、その制限がによって逆に日本人の賃金をも低く抑えられる可能性も考えらるようです。

現状では外国人看護師との賃金格差がないようにとなっていますが、
はたしてどうなっていくのか? アメリカ、カナダなどでは賃金格差があると言われているようで、
また病院経営の中で人件費が占める割合は相当大きなもので、人件費の削減は避けられないところです。看護協会が賃金体系は一つにといっても、財政が困難な病院経営者側がそのようなことを押し切ってしまわないか? と思います。
そうすると国内の看護師は一部の能力のある看護師を除いて、賃金の安い外国人労働者にしてしまえばいいとか、看護師も派遣会社から雇えばよいというようになってくる可能性があると思います。
病院はそれで回っていくでしょうが、日本における看護という職業の魅力は削がれてしまうのではないかと思います。
他の産業と同様に、低賃金の外国産に駆逐される可能性があると思うのです。
先にも書きましたカナダなどでは、看護は魅力のない仕事として見られていると聞いています。
おそらくフィリピンの看護師の方が献身的に働き、英語もでき、更に低賃金となるとみなさん雇うでしょう。
 3.4 経営と合理化
 前で少し述べましたが、経営の中で人件費の占める割合は多く、病院において看護師の人件費が多数を占めます。
仕事の効率・有能さなどを考慮せず単純に比較すると、高齢の看護師1人が辞めることによって2人の新人を雇うことができます。
組織にとっては人件費の軽減が大きな問題になっています。
給食とか事務とかいろいろな部門が外注になっていますが、看護は聖域だと思っていたら大間違いで、すでに派遣(現在は紹介派遣という形ですが)さらには株式会社参入まで考えられています。

「コード・グリーン」 ダナ・ベス・ワインバーグ 著 日本看護協会出版会 という本があります。
この本の舞台となったのは、ベス・イスラエル病院。この病院は、看護師を目指す者にとって世界で最高の病院の一つだった、そしてマグネット・ホスピタルとして最高水準を示していました。
他の病院が看護師を安い労働力として使い捨ての扱いだったのに、ベス・イスラエル病院は、看護師は医師の小間使いではなく患者ケアの提供にかかせない知識と技能を持った専門職として扱ってきた…と本書にはあります。
この本は、そのベス・イスラエル病院がリストラクチャリングとコスト削減により、結局は看護の質を悪化させ看護師の誇りを傷つけ、そして病院は財務的な業績も低下したと…看護にとって悲劇的になったことが書かれています。
内容はアメリカの医療制度など日本と異なるところが多いものの、決してアメリカだけの特殊なものではないと考えられます。

「週刊医学界新聞 2660号」 看護のアジェンダ 井部俊子 によると、
ベス・イスラエル病院ではないが、アメリカのカリフォルニア州の基準では"常時"5対1看護。
日本における2対1看護と比べてみると、"常時"5対1看護の方が圧倒的に看護者の人数は多く必要であることがわかる。
もちろん日本とアメリカの医療制度の違いなどを考慮しない単純な比較であるが、ベス・イスラエル病院と同様なことが日本でも起これば、看護者の人数が少ないため更に悲惨な状況になる事が予想される。

「看護師がいなくなる?」  フェイ・サタリー  西村書店 においては、
コストの問題ではなく、看護を取り巻く様々な問題を取りあげています。そのさまざまな問題により看護師不足になっていることについて述べています。
この本の最初に象徴的なことが書かれています。
それは、自分が看護師として働いていて、その看護という職業を自分の子どもにすすめられるか?というものです。
コストの問題・人員の問題など様々な問題より、子どもに自分の職業、看護職をすすめたくないという人は少なくないようなのです。
そんな子どもにもすすめられない仕事を誇りを持ってできるのか?!

自分が愛している職業をすすめられないなんて、なんて悲しいことでしょう。
この本はアメリカで書かれたものですが、日本でも現状は同じなようです。
「看護が単なる労働に終わらぬ魅力的な職業として」

看護という職業が魅力的でなくなり、自国民が看護師になることを望まず、他の一部の先進国のように外国人看護師に依存しなければならなくなってしまう状態にならないか、非常な危機感を持ちます。
質の低くなった病院に患者は来るでしょうか?! コスト削減ではなく、看護を考え、より良い看護の提供が顧客を自分たちの病院に向けることができる。
看護師をも引きつけることができる。
それこそがマグネット・ホスピタルであろう。
そして、看護職を希望する次世代の人の育成、魅力ある職業である看護の成熟が必要ではないか、と考えます。
もし、看護が好きで看護という仕事に誇りを持っているのであれば、ベス・イスラエル病院の教訓を繰り返すべきではないと考えます。
 3.5 他の外国人労働者
 他の外国人労働者のエスケープなど
 2006年10月のニュースで、外国人研修・技能実習制度で失跡する研修生が2000人近くいるらしいです。
そして不法滞在や資格外の仕事に就いていると見られるそうです。
この制度は今回の看護師の問題とは資格などの面から違うものです。
現在は専門的な知識や技能を持つ高度な人材は受け入れるが、建前上単純労働者は在留を認めないこととなっています。
しかし実際は高度な人材は18万人程度で、60万人ほどが単純労働者で、そのうち30万人は不法滞在とみられています。
不良外国人による犯罪の増加など、治安の悪化にもつながっています。国によっては不法移民の問題が生じているところもあります。

また、逆に日本の雇用者側の問題もあります。
雇用者側が雇用契約を結ばず、最低賃金法などを守らない、違法なことをしている現状もあり、失跡する原因の一因となっていると思われます。
なかには失踪防止のためにパスポート、通帳などを預かっている企業もあるそうです。
日本人が嫌がって就かない仕事を外国人にさせています。
看護も自らの職業に誇りが持て、賃金もそれなりにもらえるようでないと嫌がる仕事となり、看護という職業に就かなくなってしまうのではないかと思います。
 3.6 他の外国では
 一部の先進国では肉体的精神的重労働である看護師になろうとするものが減少してきており、それをおぎなうため外国からの看護師に依存している現状があります。
他の外国で外国人の看護師を受け入れている国では、「外国の看護師資格を有すれば就労を認めている」というところはないそうで、なんらかの制限があるようです。
制限は当然の事ながら国によって異なり、サウジアラビアなど国によっては、語学力や看護の能力などを評価したうえで受け入れているようです。
ニュージーランド、オーストラリア、イギリスなどでは、外国の看護師資格を有する看護師に対して、優遇措置によってその国の看護師資格を与えているようです。
日本はそれらの諸外国に比べて厳しいものと言えると思います。
途上国から先進国への看護師の輸入は多くの国が行っているようです。約1万人前後のフィリピン看護師が毎年海外に渡っています。
イギリスの事情には、
看護師の国際的採用活動が政策上に与える示唆 INR Vol28 No.4 2005が詳しく、
イギリスはNHS(英国保健サービス)というところがさまざまな改革をしています。その中でのこの外国人看護師についての示唆は参考になると思います。
4.関連すること
 4.1 介護との関係
 今回のEPAで同時に介護福祉士の受け入れも決まりました。
看護師400名よりも多い介護福祉士600名を2年間で受け入れるそうです。
介護士の不足がいわれており(不足していないという意見もありますが)、 介護士の離職率は20%を越え、更にはなろうとする人も減り、介護士の学校も空きがあるようです。
介護という仕事が家庭でもできる仕事として低く見られがちだそうで、収入となるところも介護保険の関係から職員の給与面での改善は見られないようです。更には腰痛などの職業病的な問題もあり、なり手の減少が懸念されています。
待遇の改善、誇りを持ってできるやりがいのある仕事、教育面とのリンクなどが無ければ定着率を上げるのは難しいでしょう。
看護よりも介護の方が外国人の問題は早急な感じがします。
高齢化社会、日本人が介護士になりたがらない、介護士の離職などが進むと一挙に外国人介護士が入ってくる可能性があるのではないでしょうか? なり手がいないのなら外国から補充しなくては高齢者の介護ができません。
看護は介護の現状を見ていかなければならないと考えますし、看護と介護は密接な関係があります。
 4.2 フィリピンでの問題
 ICN(国際看護師協会)などによると看護師の国際間移動という表現を使っていますが、あきらかに出稼ぎです。
フィリピン、インドにおいては看護師の輸出は外貨を稼ぐ重要な貿易なのです。
そして外国への流出が多いため、母国の看護は貧弱なものになっているようです。ICN(国際看護師協会)レベルでは大きな問題となっているようです。
賃金のところでも述べたように、医師が看護師の資格を取りアメリカなどに渡る…それだけフィリピン国内の看護だけでなく医療全体が貧弱になっていっています。
医師や看護師の海外流出でフィリピンの私立病院が閉鎖になっているようです。
他国の政策にからむことですので余り触れませんが、大きな問題だと感じています。
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その他

1.フィリピン人のよさに触れておく
 フィリピン人をけなすことは本意ではありませんので、フィリピン人の良さなどについて述べておきます。
・大家族制なので家族の面倒を見るのは当然だと感じており、献身的であるとのこと
・大学教育である。日本では大学が増えてきているが、多くは3年であり、いまだに准看護師の養成機関があるレベル差は大きい。フィリピンはアメリカ的大学教育を受けているようで、アメリカの後追いをしている日本よりもレベルは上かも知れない。
注:学校制度は小学校6年、高校4年、大学4年と日本に比べて大卒まで2年少ない制度のようです。
フィリピンの看護師のレベルが高いと思われるため、フィリピンの看護師が日本で働く事で日本の看護レベルが底上げされるのではないかと言う見方もあるようです。
更に、当初来日予定の人達は選抜された人が来ると思われるのでレベルは高いと推測できます。
・英語ができる。これは都市部での外国人患者の対応のみならず、研究分野においては英語は不可欠で、日本人は英語が不得意な人が多い。
・他でも外国がある故に、同じ看護師として切磋琢磨できる
2.様々な事
 実際看護をしてもらうのだったら、疲れ果てた日本人の看護師より健康なフィリピンの人の方がいいんじゃないの?とか、制限を緩やかにしてもっと賃金の安い外国人看護師を入れて、看護をする人を増やして看護の充実をはかった方がいいんじゃないか? という意見もあります。
ナースコールを押してもすぐにきてくれない、いつも忙しそうにしており話づらい…と、もうすでに疲弊した日本人看護師像がそこにあります。

厚生労働省、外務省、法務省などいろいろなところが関係しているが、主に外国人看護師をすすめているのは経済関係者のようです。
現在はフィリピン看護師の問題ですが、これからの貿易協定でフィリピン以外の他国からの看護師の受け入れも開かれる可能性は高いでしょう。

受け入れ態勢をどうするのか?国内の受け入れ業者がするのか?そのまま病院にはいるのか?トレーニング、採用後のサポートの問題は?
まだまだわからないところも多いですが、
国内の看護師養成への影響としても、外国人看護師によって看護師が充足されると、3年以上かけて国内で養成する人数などを減少させるという考えも出てくるのではないかと思います。
3.追加事項
 日本看護連盟のニュースレター「アンフィニ」8月22日号 によると インドネシアとEPAの署名をし、看護師と介護福祉士を日本が受け入れることが決まりました。
2年間で看護師40人、看護福祉士600人を上限に受け入れるとのことです。

フィリピンの方は遅れがあるので、初の外国人看護師はインドネシアではないかとの事です。
更に追加事項
11月5日のニュースより 日比EPAがフィリピン国会が批准しないと言うことで、まだまだ遅れそうですし、日本行きをあきらめる声もフィリピンにあるようです。
また追加事項
08年1月24日の四国新聞によると福祉国家であるフィンランドでも看護師は賃金が安いと看護師離れが進んでいるとのこと。そして、フィリピンから看護師を受け入れるようです。昨年看護師がストライキをし、賃上げと待遇改善を求めたのが発端のようですが、フィンランドでもこの状態のようです。
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おわりに

 現在の受け入れ要件で、現状ではあまり問題がないと思われます。
しかし、以降の見直しが不明であること、厚生労働省の看護師の需給見通しが7対1看護を含むものかどうか不明なことから、国内の看護師で充足できるのかどうか、場合によっては大幅に外国人看護師が増える可能性はあると思います。
なり手がいないために外国人を雇わざるを得ない状況にすべきではないと考えます。
看護が魅力のある職業でなければなり手はいなくなります。
魅力のある職業にするために国内の問題…(例えば慢性的な人員不足など)にも対処して、魅力ある職業であって欲しいと願っています。
看護協会などの論調では、外国人看護師が入ってくることによって労働市場に悪影響を及ぼすことについて述べているところが多いように思います。
ここでは看護が魅力ある職業であり続けるために、節操のない流入は慎むべきだと警告しておくにとどめます。
自分なりにいろいろなものを調べました。信頼のおけるところからの情報をもとに書いていますが、全てのデータに対して裏づけをとっているわけではないので、間違いがあるかも知れません。
また不足している情報も多くあり十分なものではないと思います。
ご指摘していただければありがたいです。
多くの方からご意見を頂きたいと思います。

私たち日本の看護師が看護に魅力を持ち続けられるよう努力し、それらを伝えていかないと日本における看護の魅力は失われ、血の通った看護はできないと感じます。
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関連リンク

■外務省:日・フィリピン経済連携

■独立行政法人 労働政策研究・研修機構

■日本看護協会

■NHK BSディベート2006年10月

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参考図書

■特集/外国人看護師受け入れの影響 INR Vol28 No.4 2005
■「フィリピン人看護師受け入れ」のゆくえ
 ――これまでの経緯と今後の動向を整理する
 ナーシング・トゥデイ 2005年7月号 Vol.20,No.7
■フィリピン人看護師の国際移動を支える社会システムの現状と日本進出の可能性 看護管理 Vol.17 No.2 2007
■「コード・グリーン」 ダナ・ベス・ワインバーグ 著 日本看護協会出版会
■週刊医学界新聞 2660号 看護のアジェンダ 井部俊子
■「看護師がいなくなる?」  フェイ・サタリー  西村書店

■06年11月21日 NHK ニュースウオッチ9
■06年11月21日 NHK スポーツ&ニュース