事故防止でコミュニケ-ションは大きな問題です。コミュニケ-ションは、手段・表現方法、技法など分類はいろいろのようですが、事故防止についてコミュニケ-ションを大きく二つに分けてみます。
一つは伝達過程での問題 コミュニケ-ションをしているが間違って伝えられていることなどです。情報が間違って伝えられたり、情報が途絶したり、事故の要因の一つとしてよくあげられるものです。たとえば、聞き間違い見間違いによる事故事例はたくさんあります。多くの場合このコミュニケ-ションの不足が事故原因とあげられる場合が多いと思います。
そしてもう一つは、言えないこと、伝えることが出来ない事によるつまりコミュニケ-ションをとらないことによる障害が大きな問題だと思います。
前者は流れに沿ってどこで情報がとぎれたのか間違った解釈をしたのかわかり、対策を行うことも可能ですが、言えることが出来ないことは表にでにくいこともあり綿密な調査をしなければわからずに終わってしまうこともあります。また、前者に比べても対応策が難しいのではないかと思います。
ここではこのコミュニケ-ションをとらないことについて述べてみたいと思います。
この意見を言わないことがどれほど事故にかかわってくるのかは、前者の情報の途絶などと比べても重要な意味を持つと考えられると思いますし、看護職としての専門性倫理観にもかかわってくる大切なところだと思います。
腸閉塞を放置、男児死亡 東京・東部地域病院
この事故は、2003年5月に生じたもので、 看護師と当直医師のコミュニケ-ションについて仲間内で話し合った事例で
医療・看護討論用掲示板
2003/10/11 ~11/04 で話し合われています。この討論の中で看護師は医師に対してどのような対応コミュニケ-ションを取っていけばよいかと言うことを討論しました。医師を攻撃するためにこの事例を選んだものではありませんが、看護師から医師へのコミュニケ-ションについては看護師間に比べて困難なことが多いと思います。
この事例では看護師と医師のコミュニケ-ションについての問題ですが、実際には看護師と看護師という場面でもコミュニケ-ションの問題から事故に関係する場合は多いです。いつでもどんなときでも言える人はよいです。しかし、言えない人もいます。
言わないとどうなるのか? 一番大きな問題はそこで事故になってしまうことです。すぐに言わなければいけない時があります。その時にすぐに指摘する、意見を言わないと手遅れになるときがあります。事故を止めることなく事故につながっていきます。緊急でない場合に置いても、言わない、指摘しない、注意しない、指導しない、と
どうなるかというとそのまま放置なんです。つまり何も改善されない。そればかりか、そのミスはまたどこかで同じ事が起こり事故につながっていきます。
言いにくい、言えない状態というのはたくさん挙げられます。
重大すぎるミスの時
ミスをしていてもわかっていない時
他人がいる前での指摘 相手が言わせないぞ!という雰囲気を持っている人
恐い先輩がミスしたときにはなかなか言いづらいものだと思います。
学歴、年齢、経験、権力、 無口、無視、知識不足、判断ができない時など
価値観の違い、倫理観の違い、民族性の違い、奥ゆかしさ、教育の違い
相手の拒否的態度、性格的なもの、易怒性、など バラバラと要因を挙げてみましたが 更に医師とのコミュニケ-ションであれば更に要因は多くなると思います。
看護師側の問題としては、医師の指示の元で ということもあり診断、治療に関係するようなことは言いにくいことが多いからです。とバラバラに挙げましたが、
参考文献 特集 医療事故を防ぐために 「コミュニケ-ションエラ-」「エラ-回復」という概念 看護 日本看護協会出版会 vol.56
no.2 2004
看護師はなぜエラ-の指摘をためらうのか 森永今日子
看護師がエラ-の指摘をためらう理由 として看護師など413名を分析対象とした研究において
1.立場の違い 2.間違いへの確信が持てない 3.人間関係の悪化が心配 4.現在の人間関係 5.間違いの内容による の5つが見いだされたとありました。
※詳しくは、文献を参照してください。
高圧的な医師に注意できますか?
自己主張の強い看護師に指摘できますか?
ひよわな新卒にアドバイスができますか?
そこで"アサ-ティブ"です。 最近この"アサ-ティブ"という言葉を見かけるようになってきました。
看護教育のなかにも取り入れられているようです。
アサ-ティブ ジャパン ASSERTIVE JAPAN
上記HPより引用抜粋しますと
"「アサーティブネス(Assertiveness)」の訳語は、「自己主張すること」。しかし、アサーティブであることは、自分の意見を押し通すことではありません。自分の要求や意見を、相手の権利を侵害することなく、誠実に、率直に、対等に表現することを意味します。"
また "権利は、自己責任を伴っています。自己責任を欠いた自己主張は決してアサーティブではありません。自分の権利と責任をしっかり認識した上で、はじめて対等で誠実なアサーティブなコミュニケーションは成り立つのです。" 以上 引用抜粋
つまり、相手が医師であれ看護師であれ不安全な活動をしている場合、またはする可能性がある場合は、看護師はコミュニケ-ションをとらなければいけないと思います。その場合自己責任を持ってつまり根拠とするものを持って、医師または看護師への意見を言うことが事故を未然に防ぐ事になります。
JAS CRMというCRMトレ-ニンク゛
assertion /inquiry という項目があり inquiry(質問、照会) 医療は航空機の事故対策をお手本の一つにしています。航空機においてはもなかなか十分なコミュニケ-ションを計る事は難しいようです。
日本人より意見をはっきり言えると言われている外国人でも副操縦士であれば機長に意見を言うことは躊躇する場合があるようで、このようなトレ-ニングをしています。
ここでのassertion /inquiry は assertionのように直接自己の意見を言うことがはばかれる場合、inquiry(質問、照会)という形になるのかも知れません。
意見をはっきり伝えるのが一番有用だと思います。 しかしどうも、それを行うには困難なことも多いようです。そのためinquiry(質問、照会)と形を取らねばならないのだと思います。
さて言うことも大切ですが、言われる方も大切です。つまり言われる側が意見を阻害するようになっていないように気をつけなければ本当のコミュニケ-ションは得られない。コミュニケ-ションが無いのなら事故は避けることはできないと思います。十分なコミュニケ-ションをとっていると思っていてもぬけがあるのはよくあることです。
相互の良好なコミュニケ-ションが事故を防ぐことになります。よりよいコミユニケ-ションをとるためにトレ-ニングをしていくべきだと考えます。
上記の 医療・看護討論用掲示板でもやはり相手を気づかい専門に抵触しないよう相手にも納得できる言い方について触れています。とかく注意をされるということを好む人もあまりいない。よくぞ注意してくださった。というまでにはなかなかなれないものだと思います。
しかし、仕事への自信は良い指摘につながっていき、指摘できることが相互の理解のためになり事故を防ぐことができるのです。アダルトで接し感情的にならず事実を伝えることでお互いが理解をしていくことは、理想なのかも知れませんが、実際には困難なときがあります。
そのため assertion とか inquiryというコミュニケ-ションの方法をとることにより 対人関係を悪化させることなく、事故防止
につながればと思います。
リンク
■JAS CRM
■ヒュ-マンファクタ-事始
▲Chapter.11 あなたは自分の上司や同僚の過りをどう指摘しますか?
■アサ-ティブ ジャパン ASSERTIVE JAPAN
参考文献
特集 医療事故を防ぐために 「コミュニケ-ションエラ-」「エラ-回復」という概念 看護 日本看護協会出版会 vol.56 no.2
2004